導入事例
Gurobi + ZOZO研究所
株式会社ZOZOが運営する物流拠点「ZOZOBASE」において、新規物流拠点開設に伴って生じた在庫配置およびオペレーション負荷偏りという課題に対し、Gurobi Optimizer を用いた数理最適化により、拠点間バランスを考慮した安定的な運用を実現した取り組みを紹介します。
背景
株式会社ZOZOは、ファッションEC「ZOZOTOWN」を運営しています。 自社物流拠点「ZOZOBASE」では、商品の入荷、検品、撮影、保管、ピッキング、梱包、出荷までを一貫して担っています。
事業拡大に伴い、物流拠点の増設を継続的に進めており、
2020年:ZOZOBASEつくば2稼働開始
2023年:ZOZOBASEつくば3稼働開始
と、複数の新拠点が段階的に追加されてきました。
新拠点の開設により、習志野エリアとつくばエリア間での保管容量構成が大きく変化し、在庫や作業負荷をどのように拠点間で配分すれば、将来にわたって安定した運用を維持できるかが重要な検討課題となりました。
在庫およびオペレーション負荷の平準化
新拠点開設後、特定の拠点に在庫や業務負荷が集中することは、将来的な運用リスクにつながります。 そのため、在庫量だけでなく、
入荷
出荷
検品
といった各工程の処理量も含めて、拠点間でバランスの取れた状態を維持する必要がありました。
拠点間輸送が発生しにくい在庫配置
ZOZOTOWNでは、原則として1回の注文を1つの梱包で発送しています。 異なる拠点に在庫が分かれている商品が同時に購入された場合、拠点間での輸送が発生します。
安定的な物流オペレーションを実現するためには、こうした拠点間輸送が過度に発生しない在庫配置を、事前に検討する必要がありました。
数理最適化によるアプローチ
これらの課題に対し、ZOZO研究所では数理最適化を用いた在庫配置検討モデルを構築しました。
モデル化の考え方
本取り組みでは、個別の注文単位を直接扱うのではなく、過去の注文実績データをショップ単位で集計し、同時に購入されやすいショップがなるべく同じ拠点に配置されるように、拠点をまたいだ同時購入数を最小化する目的関数によりモデル化しました。
日々変動する注文を個別に予測するのではなく、中長期的な在庫配置検討に適した形で問題を定式化することで、新拠点開設時の意思決定に活用できる枠組みを目指しました。
制約条件の整理
各物流拠点には、在庫量だけでなく、入荷・出荷・検品といった工程ごとに処理可能量の上限が存在します。
これらの制約を数理モデルに落とし込み、
拠点ごとのキャパシティ
在庫量や稼働率の偏りを防ぐための割合制約
を考慮したうえで、在庫配置を検討しました。

Gurobi Optimizer採用の背景
本事例では、数理最適化ソルバーとしてGurobi Optimizerを採用しました。
ZOZO研究所では、これまでにOSSの最適化ソルバーを中心に利用してきましたが、本取り組みの検討過程において、MILPの緩和解求解で、想定以上に時間がかかってしまうことが、問題構造によるものなのか、ソルバーの特性によるものなのかを切り分けることが難しい場面があり、結果や性能の信頼性が高い環境で検証したいという考えから、Gurobiの利用を決定しました。
実際に検証を進めた結果、問題はソルバーの特性ではなく、問題構造に起因するものであることが判明しました。その過程で、GurobiがLPの解法として単体法(Simplex)だけでなくBarrier法を選択できる点が有効に機能し、緩和問題の計算を大幅に高速化できました。
結果として、
計算結果や性能に対する信頼性
解法が複数用意されており、問題特性に応じて選択できる点
仮に問題が発生した場合でもサポートを受けられる安心感
といった点が評価され、本取り組みで構築した最適化計算の中核技術として活用しています。
実務への適用方法
ZOZO研究所では、数理最適化を一度きりの「答え」を出すためのツールではなく、 業務ルールや前提条件を検証するための意思決定支援手法として位置づけています。
単純に最適解を意思決定に利用するだけでなく、制約条件や業務ルールを変更した場合に結果がどの程度変化するのかといったWhat-if分析にも活用しています。
このように、最適化モデルを用いて制約やルールそのものを検証する使い方は、当初は想定していなかったものですが、新拠点開設時の検討を進める中で有効性が確認され、現在では継続的に活用しています。
ZOZOBASEつくば2開設時の取り組み
2020年のZOZOBASEつくば2開設時には、主に地域間(習志野・つくば)での在庫配置を対象として最適化を実施しました。
ZOZOBASEつくば3開設時のアップデート
2023年のZOZOBASEつくば3開設時には、これまでに構築したモデルをベースに、
新たな設備制約の追加
拠点数増加に伴う条件整理
つくばエリア内の複数拠点を考慮した配置検討
を行いました。
モデルを一から作り直すことなく、既存の枠組みに制約や条件を追加する形で対応できたことで、新拠点開設という非定常なイベントに対しても、事前検証を行いながら安定的な運用設計が可能となりました。
成果
在庫量およびオペレーション負荷を考慮した拠点間バランスの検討が可能に
拠点間輸送が発生しにくい在庫配置を、データに基づいて検討
業務ルールや前提条件を含めた、客観的な意思決定プロセスを構築
新拠点開設時にも再利用可能な、拡張性の高い最適化手法を確立
今後の展望
ZOZO研究所では、物流拠点の在庫配置に限らず、社内で数理最適化を適用可能なテーマを継続的に調査し、検討や導入を進めています。
今後も、業務課題の整理や意思決定支援の手段として数理最適化を活用し、株式会社ZOZOのさまざまな業務領域における改善に貢献していく予定です。
